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リチウムイオン電池などの蓄電デバイスの国際標準化

リチウムイオン電池などの蓄電デバイスの国際標準化

リチウムイオン電池を始めとする様々な蓄電デバイスが今日グローバルにあらゆる分野で普及している背景として、それぞれのデバイスの製品としての魅力に加え、国際標準化が果たしてきた役割を忘れてはなりません。今回はこれら蓄電デバイスの国際標準化についてご紹介します。

国際標準を制する者が市場を制する

「国際標準を制する者が市場を制する」という言葉があります。

ある年齢以上の方であれば、家庭用ビデオレコーダーの規格争い「VHS vs ベータ戦争」をご存知かと思います。カセット収納型の家庭用ビデオの規格として、当初乱立していた様々な規格を勝ち抜いた「VHS方式」と「ベータ方式」との間に巻き起こった、最後の生き残りを賭けた熾烈な覇権争いのことを指します。最終的には「VHS方式」が標準化を勝ち取ることで決着し、一時は市場を席捲していた「ベータ方式」ですらも市場から駆逐される結果となったのです。

事程左様に、グローバルな市場戦略を展開するに当って、いかに標準化が重要かということを示す好例となっています。

蓄電デバイスの国際標準化

バッテリーや蓄電装置の分野においても国際標準化の重要性は変わりません。身近な例では乾電池の単1や単3といったサイズも国際標準で定められた規格の1つです。新たな蓄電デバイスの開発に当っては、市場戦略上、大きく2つの観点で国際標準への対応が必要となります。

1つめの観点は、既に存在する国際標準、規格への適合性を確認することです。例えば、リチウムイオン電池の場合、その用途に応じて安全性や試験方法に関する様々な規格が存在しますが、メーカー各社はこれらの規格への適合性を確認し、ユーザーに示すことで、製品に一種の「お墨付き」を与え、有利に市場展開を図っていけるメリットがあります。また、先のブログ「リチウムイオン電池など蓄電デバイスを輸送するための国際ルール」の中でもご説明した輸送規制のような、法律上守らなければならない規格への適合性の確認も欠かせません。

2つめの観点は、自分たちで新たなスタンダードを作って、有利に市場展開を図っていくという考え方です。特に全く新しいタイプのデバイスの場合、製品サイズや試験方法、安全性規格など、主導的に標準化を進めて行き、自分たちに有利なルール整備をしておくことで、その後の市場戦略を主体的に展開していくことが可能となります。

リチウムイオンキャパシタの試験方法の国際標準化

リチウムイオンキャパシタ(LIC)とは、一般的な電気二重層キャパシタの原理を使いながら負極材料として リチウムイオン吸蔵可能な炭素系材料を使い、そこにリチウムイオンを添加することでエネルギー密度を向上させたキャパシタです。

リチウムイオンキャパシタは高出力、長寿命、高い安全性などの特徴を持ちますが、この

新しい蓄電デバイスを市場展開するに当って取り組んだ国際標準化までの道のりについてご説明します。

新しいデバイスとして誕生したリチウムイオンキャパシタでしたが、当初はその試験方法に関して統一規格がなく、メーカー各社独自の方法で試験を実施していました。しかしその普及に伴い、統一した試験法確立への要望と共に、その国際標準化をリチウムイオンキャパシタメーカー各社協力の下進めようとの機運が高まってきました。そして2009年、リチウムイオンキャパシタのIEC規格化へのチャレンジが始まりました。

IECはInternational Electrotechnical Commission の略で、国際電気標準会議と訳される電気・電子分野の標準化組織です。電気・電子分野以外の国際規格であるISOと共に、国際標準化の代表的組織であり、JIS規格の多くもこのIEC規格を基に制定されています。

我々はリチウムイオンキャパシタの国際的な認知度と各国ユーザーの信頼を勝ち得るためには、IEC規格の中でも、その影響力の最も大きい国際規格(International Standard:IS)を目指すべきとの判断に至りました。

IECの規格化は提案段階、原案作成段階、照会段階、発行段階など、審議の各段階を踏まえながら、約3年間かけて進められます。キャパシタ関連の審議はIECの中のTC40と呼ばれる委員会で行われるため、我々はTC40の日本の審議団体である電子情報技術産業協会(JEITA)に所属して、その傘下で標準化活動をスタートしました。

試験方法の規格化にあたって、2つのコンセプトを定めました。

  • 1つめは、適用範囲はできるだけ広く、というものです。一口にリチウムイオンキャパシタと言っても、大きさも形状も様々な製品が存在します。初めての試験法規格となるこの国際規格では、これらに広く適用可能なものにしようということになりました。
  • 2つめは、試験項目は限定的に、というものです。試験項目の中でも特に重要で使用頻度の高い、静電容量、内部抵抗、自己放電特性に対象を絞って、その試験方法を標準化する方針としました。

汎用性が高く、測定誤差が少なく、一般的な試験機で測定できる、など自分たちで課した制約を満たす試験方法を確立するべく苦労を重ねた結果、ようやくIECに提案できる規格案に仕上げることができました。

そして2013年のIEC提案から3年近い審議を経て、2015年、IEC62813という規格番号のもと、リチウムイオンキャパシタ試験方法の国際規格化が実現しました。このIEC規格は後に和訳され、国内規格JIS C 62813として発行されて広く国内ユーザーにご利用頂いています。

リチウムイオンキャパシタの普及は、リチウムイオン電池に比べて、まだその緒に就いたばかりですが、製品開発と並行して、今後も戦略的に国際標準化を進めて行くことで、世界を席捲する蓄電デバイスへと飛躍を目指して行きます。

蓄電デバイスの国際標準化についてのまとめ

いかがだったでしょうか?本稿では蓄電デバイスの国際標準化についてご紹介しました。

弊社では本稿でご紹介したリチウムイオンキャパシタの開発・製造を行なっております。ご興味のある方はご参考にしてください。

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